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INTRODUCTION

 2024年の全米サマーシーズンに爆発的な大ヒットを飛ばし、日本でも大きな反響を呼んだ『ロングレッグス』。気鋭の独立系映画会社NEONの歴代興収記録を更新したこの恐怖映画は、それまで一部のマニアにだけ知られる存在だったオズグッド・パーキンス監督を、ホラー・ジャンルの新たな旗手に押し上げた。その現代ホラー界の鬼才と、全米賞レースに絡んだ『センチメンタル・バリュー』『しあわせな選択』『シンプル・アクシデント/偶然』の配給を手がけて勢いに乗るNEONの最新タッグ作、それが『KEEPER/キーパー』である。

 交際相手の男性からロマンティックな週末旅行に誘われた女性を主人公にした本作は、いわゆる“山小屋/山荘もの”のホラーとして幕を開ける。しかし、その後は予測不能の奇怪な出来事が相次ぎ、観る者は主人公同様に現実と悪夢の境界さえ見失って、この世のあらゆる常識もホラーの約束事も通用しない極限恐怖に理性を狂わされるはめになる。

 特異なオリジナリティーを全面に押し出したパーキンス監督は、説明的な描写を徹底的に排除し、幾重にも折り重なったミステリー、異様なテンションがみなぎるスリルとサプライズを映像化。あたかも観客の感性を試すかのようなその先鋭的な作風は、全米で極端な賛否両論を呼ぶ一方で、ギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ワン、ポン・ジュノ、小島秀夫といった著名クリエーターの惜しみない絶賛コメントを獲得した。まさにパーキンスからの“挑戦状”というべき革新的な衝撃作が、ついに日本でもその全貌を現す。

STORY

とある週末、都会暮らしのアーティスト、リズ(タチアナ・マズラニー)が、恋人の医師・マルコム(ロッシフ・サザーランド)から交際1周年の記念旅行に誘われる。ところが鬱蒼とした森に囲まれた山荘に到着後まもなく、リズは奇妙な幻覚に苛まれることに。翌日、マルコムが病院に呼び出され、ひとり取り残されたリズは、現実と悪夢の境目を見失い、山荘内にうごめく何かの気配に脅かされていく。果たして、この山荘に隠された秘密とは……。

PROFILE

オズグッド・パーキンス/監督
1974年生まれ、アメリカ・ニューヨーク州出身。エマ・ロバーツ主演、A24製作『フェブラリィ~消えた少女の行方~』(15)で監督デビュー。その後『呪われし家に咲く一輪の花』(16)『グレーテル&ヘンゼル』(20)で監督を務め、監督第4作目となる『ロングレッグス』(24)は、日本でも大きな反響を呼んだ。俳優としても活躍しており『キューティ・ブロンド』(01/監督:ロバート・ルケティック)、『セクレタリー』(02/監督:スティーヴン・シャインバーグ)、『スター・トレック』(09/監督:J・J・エイブラムス)、『NOPE/ノープ』(22/監督:ジョーダン・ピール)に出演。本作は『THE MONKEY/ザ・モンキー』(25)に続き、映画会社NEONと3作目のタッグ作品となる。
タチアナ・マズラニー/リズ役
1985年、カナダ出身。『ウルフマン リターンズ』(04/監督:ブレット・サリヴァン)で長編映画に初出演。萩上直子監督の『トイレット』(10)では、もたいまさこ演じる祖母と暮らす3兄弟の末っ子リサを演じた。「オーファン・ブラック 暴走遺伝子」シリーズ(13~17)で主演を務め、プライムタイム・エミー賞ドラマ部門の主演女優賞を受賞、ゴールデングローブ賞にもノミネートされブレイク。主な出演作にドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」(22)、映画『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』(17/監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン)、『The Only Living Pickpocket in New York』(26/監督:ノア・セガン)など。本作に続き、オズグッド・パーキンス監督の『The Young People』(26)にも出演。

PRODUCTION NOTE

ハリウッドのストライキのさなかに異例の経緯で実現したカナダでの撮影
 オズグッド・パーキンス監督の5本目の長編映画となった本作は、前作『THE MONKEY/ザ・モンキー』の製作が2023年にハリウッドを揺るがしたダブル・ストライキ(全米脚本家組合と全米映画俳優組合のスト)によって中断した間に撮影された。パーキンスは自らのチームの活動を継続させるために、ストの影響を直接受けないカナダのスタッフ&キャストと組み、同国のバンクーバーで撮影を行った。脚本を手がけたニック・レパード、主演を務めたタチアナ・マズラニー、ロッシフ・サザーランドもカナダ人である。
オズグッド・パーキンス監督が語る
“有害な男らしさ”というテーマ
 「この映画の核心にあるのは、とても長い間、悪い行いを続けてきた男性というアイデアだ。それは私にとって、ホラー映画にふさわしい怪物のように思えたんだ」。本作の主題のひとつである“有害な男らしさ”について、パーキンス監督がさらに説明する。「結局のところ、本作は家父長制、あるいは男性主導の世界が、ある種の醜さを帯びているという事実を扱った作品になった。それはまさに怪物のようなものだ。私自身も男性だが、時に私たちがよくない行動を取ってしまう事実に対し、ほんの少しでも責任を負いたいという思いで本作を作った。この映画では、それが最もグロテスクな形で描かれているんだ」
 パーキンスはデビューから一貫して「自分の内にある問題」を、自作のホラーのテーマにしてきたとも語る。「“有害な男らしさ”が世間で受け入れられなくなったのは、この10年以内のことだ。本作を作るうえで最も意識していたのは、“自分はマルコムとどう似ているか?”という点だった。私自身の男らしさのどの要素を自省すべきなのか。この映画が自分のよくない側面を、どのように映し出しているか。それが重要だった。どこで不注意や不誠実なことをしたのか? ただ品のない行動を取ったのか? 私にとって、それが本作における“怪物”になったんだ」
主演のタチアナ・マズラニーが語る
恋人への不信と孤独の恐怖
 パーキンス監督は『THE MONKEY/ザ・モンキー』でも組んだタチアナ・マズラニーが主演にふさわしかった理由を、次のように語る。「タチアナは本当にこの役をやりたがっていたので完璧だった。ニックから渡された40枚の脚本のアイデアを彼女に見せると、創造的かつインスピーションのレベルで通じ合うことができたんだ。私たちと一緒に何かを探求していく可能性にワクワクしたんだと思う」
 マズラニーが演じた主人公リズは、交際相手のマルコムとの長期的な関係を築こうとしている女性だ。その半面、彼女はマルコムを信頼できない部分があり、不安を感じている。マズラニーがこの複雑な役どころについて語る。「身体は何かを知っているのに、(心は)それを信じられない。それが本作に出演した私の感覚でした。リズは危険信号が発せられているのに、それを無視してしまい、山荘から立ち去らない。なぜなら表面上は“これは正しいことなんだ。私はここにいなければならない”と思えるからです。それでも、彼女の心はとっくにマルコムから離れている。そのような関係性の中での孤独感を描いた映画です」
創造性とユーモアに満ちた撮影現場と
VFXが生んだ異形のクリーチャー
 パーキンス監督が創造性の自由に満ちていたと語る現場は、マズラニーにとっても同様だった。彼女が撮影を振り返る。「この映画には多くの制約がありましたが、奇妙なことに、逆にそのことが私たちができることの可能性を広げてくれたんです。オズの作品で一貫しているのは、現場に笑いと喜びと好奇心があふれていること。だから撮影中、ずっと重いものを背負っているわけではありません。扱っているテーマは暗いものが多いけど、仕事に臨むときのユーモアのセンスが、暗い場所へ踏み込むことを可能にしてくれるんです」
 また劇中には、日本の妖怪である“ろくろ首”を思わせる怪物など、この世のものとは思えない何体かのクリーチャーが登場する。この点についてパーキンスが解説する。「多くの人々がこの映画では特殊メイクを大量に使っていると思っているようだが、実際には多くのVFXを使用している。エドワード・ダグラスという非常に優れたVFXアーティストがいて、彼は『THE MONKEY/ザ・モンキー』『ロングレッグス』でも素晴らしい仕事をしてくれた。ここ数年、私の映画で起こった象徴的な出来事の多くは彼の功績なんだ」

COMMENT

※敬称略、順不同
オズグッド・パーキンス、今最もクリーピーな雰囲気を作り上げることに長けたクリエイターかもしれない。小屋に置き去り、幻覚付き。超シンプルながら牽引力が強い。形容し難い空気感も相まって、目が離せない。雰囲気一本槍の投げっぱなしで終わらせないところも良く、観る前には想像できないタイプの後味が残った。
人間食べ食べカエル
人喰いツイッタラー
子供の時に幽霊を見た記憶があり、その恐怖を映画にしたくてJホラーを撮ってきた。『KEEPER/キーパー』は、あの時の恐怖を私の脳裏に蘇らせた。この映画は幽霊そのものだ。
鶴田法男
映画監督・小説家
ホラー界のサラブレッドが仕掛けた最新作は、あなたの期待と想像を軽々と超える!クライマックスの急展開は脳を突き破って顎が落下すること必至! ホラー映画の勝負は〈恐怖の実体〉がスクリーンに出現した瞬間にある!というセオリー通りにやってくれました。癖ある演出に、ますます磨きのかかったブルーチーズ・ホラーの誕生に刮目だ!
平山夢明
シネマdeシネマ主宰
「優しいはずの恋人が何かおかしい」「この山荘何かがおかしい」「隣の山荘もおかしい」「隣の山荘に住む男もおかしい」「男の恋人もおかしい」「森ごとおかしい」「ケーキもおかしい」そういう違和感を静かに不穏で恐怖を煽る映像美で表現。画面の隅々にまで漂う緻密な不快感。「人里離れた逃場のない山荘に閉じ込められた」というシュチュエーションスリラーでありながらあからさまな演出に頼らない。渋いホラー映画。なんだけど良い意味でちゃんと馬鹿馬鹿しい。
品川ヒロシ
映画監督
自然の中の
山荘がとてもいい

住みたいな
こんなとこええな

すごくきれいで

すごく
お似合いのカップルの
イチャイチャを
羨ましい限りだったんですが

なんか
どっ!と
びっくりさすホラー映画かと思ったら

切なくて
悲しくなってきて

でも
最後爽快やから

僕も
はやく恋して
彼女をつくって
大事にしたいな
思いました
チャンス大城
お笑い芸人
積み重なる不快感はいつの世も女性が浴びせられてきたものだ。
「キープする側」だった男が「キープされる側」となり助けを乞う時、その目に何が映るのか。
Base Ball Bear・小出祐介
ミュージシャン
この映画は間違いなくホラーなのですが、パーキンス監督の個人的な笑いのツボを見せられているのではないかとも思いました。ちゃんと怖いんですが、しかし見てる人を笑わそうとしてるようにも見える映像だと感じます。恐怖を笑わされる不思議な感覚でした。とても面白い(Interesting)映画だと思います!楽しかった。
SLAVE.V-V-R
ボカロP
この二人の関係はなんなのか?さっぱりわからない。
この家はなんなのだ?わからない。
どこに居るのかも、何を観ているのかも、タイトルの意味も判らない
まるで、箱庭の迷宮にKeepされてしまったかのようだ
氏家譲寿(ナマニク)
文筆業/映画評論家
恐怖の天才・オズグッド・パーキンス監督が再び発明した新しい“不気味”の定義。
計算され尽くした映像美は、その根底で哀しいほどに人間の業と結びつき、本作においては、現代社会では覆い隠されつつある、歴史に刻まれた女性搾取のトラウマとその怨嗟に、恐るべき“姿形”を与えてしまった、おぞましいけど美しい、吐き気がするほどロマンチックという理不尽な耽美。
末廣末蔵
ジャンル映画大好きツイッタラー
「私は一体何に脅えてるの!?」ずーっと掴めそうで掴めない、正体不明の不安が続く1時間でもうストレスMAX!(褒め言葉)
要所要所で出現する怪異が、気持ち悪くも笑ってしまう部分もあり、この映画かなり好きすぎる!!!
99分という短い上映時間の中で脳裏に焼き付いてしまうシーンが沢山あり、ストーリーも最高のサッパリ加減!蒸し暑い初夏にピッタリなホラー映画です!!
RaMu
映画好きマルチタレント
オズグッド・パーキンス作品をたった1年間で『ロングレッグス』『ザ・モンキー』と立て続けに観てきたけど…この監督、予測不能!つかみどころがない!そして、毎回好みが割れる!本作もだいぶ変!
しかし、今回は一生忘れないキャッチーかつ怖キモいビジュアルの連続で、今年のハロウィンのコスプレはアレを被って、あのポーズがしたいな…と妄想しています。
ジャガモンド斉藤
映画紹介人/お笑いコンビ
奇妙。不気味。理解不能。
異常がざわざわと音を立て、恐怖の森に迷い込んだ気分。
山荘に隠された秘密も待ち受けていて、脳みそと感性に鳥肌が立つ!
オズグッド・パーキンス、これを撮っちゃうあなたが恐ろしい…
これは人知を超えたホラーだ。
あんこ
映画大好き芸人
楽しい時間が、一瞬で地獄に変わる…。
山荘に潜む存在、恋人の秘密、そして視界の端で感じる違和感。

それら全部が繋がった瞬間、背筋が凍りつく衝撃が走る!
これぞ、観たら二度と日常には戻れない、極上ホラー。
ニャンコ
映画紹介猫
彼氏との素敵な山小屋旅行は、奇っ怪な存在に侵食されていき、幻想的な悪夢へと変わる…『KEEPER/キーパー』は超自然的な空気感に身を任せ、考えるよりも感じてほしい。
しかし…不気味で鬱くしい “アレ” はいったい…
マツヲ
恐怖愛好家
甘く、苦く、美しいロマンスの気配。そう思った瞬間、足場が抜ける。その意地の悪さから目が離せない。
人里離れた山小屋で膨れ上がるのは、確信を持てない交際にまとわりつく不安と苛立ち。それが臨界に達したとき、何かが思いもよらぬかたちで牙を剥く。
作品ごとにまったく異なる恐怖を更新してみせる、オズグッド・パーキンスの手つきは今回も健在!
ISO
ライター
悪魔や死など重いテーマをシニカルに扱ったかと思えば、今作では「男女間の搾取」にメスを入れる。
しかし直球なテーマに比例せず、ただの山荘ホラーにとどまらず、展開は突飛かつ蠱惑的。それでいてオズグッド・パーキンスの世界には抗えない魔力がある。
KEEPER。
このタイトルが持つ“様々な”意味が、何度も“顔を変えて”効いてくるとは。
野水伊織
映画感想屋声優
自然の中に潜む超自然。
逃げ場なしで、強制的に儀式へ突入。
この“儀式の意味”に気づいた時、恐怖は一段深くなる。
ラストに、息を飲んだ。
ホラー映画取締役
幽霊か、超常現象か、オカルトか、それとも人怖か。ジャンルをまたぐような描写と、繰り返される悪夢めいた幻覚。戸惑い、恐れつづける主人公に、じわじわと「何か」が忍び寄ります。ラストへ向かうにつれ、「恐怖」は「洗練された表現」へと姿を変えていく。その鮮やかさには脱帽でした。怖さのなかに、抗いがたい格好よさがあります。
ナイトウミノワ
映画ライター
“理解できる恐怖”だったなら、どれほど安心できただろう。『KEEPER』が突きつけるのは、助かり方すら存在しない恐怖だ。
ホラー映画団長
ホラー映画拡散家
前作の狂騒スプラッターから一転、パーキンス本来の緩やかなリズムで紡がれるのは、あまりに奇妙な“愛の終焉”。現実と悪夢が静かに溶け合い、不気味なフェアリーテイルへと引き込まれていく感覚は、他では味わえない。続編やリメイクがあふれる今、“唯一無二”のホラーに出会える機会はそう多くない。
Zombie手帖
ゾンビ映画ウォッチャー